- ウクライナ侵略は、金融市場と腐敗防止が世界の安全保障および民主主義の繁栄といかに深く関わっているかを示しています。
- 欧米諸国はロシアに制裁を課して対処しましたが、欧米市場はその制裁対象の資産を流通するための中心的役割を担っているのです。
- 腐敗防止に向けて、国内および国外、そして官民の垣根を越えた世界的な取り組みをいっそう強化する必要があります。
ウクライナ侵略は、金融市場と腐敗防止が世界の安全保障および民主主義の繁栄と密接に関連していることを明らかにしました。
腐敗防止の専門家の間では、地域の長年に及ぶ腐敗が現在の紛争を激化させ、長期化させるさまざまな要因について、数週間にわたり議論が続けられています。一方、欧米の民主主義諸国はロシア経済と政治エリートに対する制裁を一段と強化し、ウクライナ戦争に対処しています。
ところが、過去に「パナマ文書」や「パンドラ文書」で露呈したように、腐敗はある地域だけの問題ではありません。むしろ国際金融システム、特に欧米市場こそ、制裁対象としているまさに同じ資産を移動、隠蔽、投資する上で重要な役割を果たしているのです。
調査レポートによると、制裁対象であるロシアのオリガルヒの多くは、家族のネットワーク、ペーパーカンパニー、オフショア金融、ブラインドトラスト、または世界で最も高額な市場における高級品や不動産などを利用して、巨額の資金を投資、隠蔽しています。
また、こうしたオフショア金融や不透明な金融商品は、特定の資産を追跡不能にし、ルーブル下落の影響を受けないようにすることで、欧米の制裁の効果を薄めている可能性もあります。
こうした状況の中で、ウクライナ戦争開始後の数カ月の間に、腐敗防止と不正資金に関する3つの重要な教訓が得られています。
1.腐敗防止は、世界の安全保障とすべての人のための民主主義繁栄の要
ウクライナ侵略によって、腐敗や不正資金に注目が集まっています。しかし、腐敗の蔓延は今回の紛争に限ったことではありません。腐敗、紛争、政情不安定は、過去長年にわたって密接に関わりあってきました。そしてこの関係は、今後も続く可能性が高いでしょう。
カーネギー基金(Carnegie Endowment)の2014年のレポートは、腐敗を追跡する有名な指標と暴力や不安定を追跡する指標の比較を行い、その結果、「深刻な腐敗を特徴とする国は、紛争や国家の破綻を経験する傾向があり、両者には明らかな相関性がある」と指摘しています。
腐敗は公共サービスを悪化させ、政治の優先課題を歪め、不平等を加速させ、政治リーダーたちを国民の意思から離れた方へと導きます。また、権威主義的な暴力や市民の不安を増加させるおそれもあります。
出典:世界経済フォーラムJapan
原著者:
Delia Ferreira Rubio
Chair, Transparency International
Rachel Davidson Raycraft
Judicial Law Clerk, US District Courts
Nicola Bonucci
Partner, Investigations & Compliance, Paul Hastings
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